幼少時より、人間国宝である祖父の後姿を見て育ってきました。
その頃は、10年前の中華街と同じように、聞香杯と飲杯はセットではなく、別々に販売されていました。
本場では、ごく普通の一般的な光景で、華泰茶荘が日本でオープンした初日は、飲杯と聞香杯が6組づつ箱に入った状態で、店内に陳列されました。
初めて売れたのは開店三日後。しかし…驚いたことに、買っていったのは飲み屋のご主人!お猪口の代わりに、飲杯をまとめ買いしていったのです。このままではまずいと思い始めました…。
日本人の家内には、茶托に乗せて1ペアづつ展示することを強く薦められましたが、自分のプロ意識や母国文化の影響から、はじめは強く抵抗しました。しかし、思い切ってこのように陳列してみると、なんとお客様はもちろん、マスコミや同業者の方たちにまで人気となり、今ではこの陳列が日本にすっかり定着したのです。
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このことで、発想の転換の素晴らしさを知りました。
それまで私は、母国文化の影響が強く頑固になっていて、発想が変化しにくくなっていました。
母国文化と外国文化の壁さえ取り除くことができれば、新しいアイディアが生まれてくるのですね。
国際結婚や海外留学、海外駐在を経験した人たちが、異文化の衝撃を受けて、グローバルな視点から物事を考えるようになり、新しいページが開かれる―これはよく言われることですが、本当にそうだと実感しています。
母国文化+外国文化→異文化融合と変容、そこには無限の可能性が広がっています。
新しい文化の刺激に、少し自分のアイディアを加えれば、まったく違う次元が見えてくるのです。
こうして、日本で初めての「茶托付き聞香杯セットの陳列」が完成し、広く定着していったのです。
★ 華泰茶荘の「聞香杯」世界がこちらへ
店主 林 聖泰