『茶藝』とは何か

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 古くからある『茶道』に対して、『茶藝』は、40年ほど前に台湾で生まれた「流行
語」であると言われています。

 当時、台湾の茶文化が盛んになり始めた頃、人々は、かた苦しく厳かなイメージの
「日本茶道」よりも、もっと日常的に家族や友人と気軽に楽しめるイメージの新しい
言葉を望みました。そこで、有識者達が打ち出したのが、「茶藝」でした。実はこの
ときまで、中国語の辞典には「茶藝」という名詞は存在していなかったのです。

 「茶藝」とは、形や儀式にとらわれず、日常生活の中で家族や友人と一緒に気楽に
楽しんだり、優雅で流暢な動作でお茶をよりいっそう美味しく楽しむ、といった概念
です。

 ご存知のとおり、中国・台湾には、茶の産地が広く分布しており、お茶の種類は数
え上げればきりがないほどです。それぞれの地域で独自の喫茶風習や入れ方が誕生
し、それは日本茶と比べてもバラエティに富んでいます。少数民族から漢民族、女性
から男性、シンプルな緑茶から手のこんだ青茶、現在ブームがおきている黒茶、それ
ぞれに様々な入れ方と風習が存在しているのです。

 自分の「流派」を作り上げるという概念より、「美味しく、楽しく、美しく飲む」
―これが、日常の茶から発展して生まれた「茶藝」の原点ともいえるでしょう。

 文化、風習、そして本物のお茶を知らなければ、表面をかじるだけで他人の真似に
なってしまいます。本物の真髄を得なくては「創造性」「オリジナル性」も生まれま
せん。
 中国茶の世界に魅了された私達ですから、ときおり初心にかえり、謙虚に大自
然から贈られた宝物―お茶について、ゼロから触れましょう。本当の心を悟っていな
ければ、外観や儀式だけの争いになってしまうのです。
 旅行、資格、講習会、イベントなどは自分の修練を積む一手段にすぎません。
決して終点ではありません。一旦自慢してしまうと、透明純真な心も乱れてしまいます。

 だからこそ、もう一度茶畑、現場に帰って一から茶を勉強する―これが、忙しい仕
事の合間に、毎年数回、農家の現場を訪れ、お茶を作る理由です。
 徹夜での茶作りは体にこたえますが、心は至福の満足感にひたることができるのです。
      店主 林 聖泰

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