これは、中国の「老子」による、もっとも良いとされる人生の生き方を現した言葉です。
この、水から学ぶという哲学は、現在でも通用する理想的な生き方だと思います。
なぜかというと…
1.水は非常に柔軟性を持ち、軟らかい
どんな器でも、器の形にそって自分の姿を柔軟に変える。
つまり、環境に合わせて、自らの姿を変えることができるということです。
それは、人生にも中国茶芸にもあてはまります。
自分の核となる信念は維持した上で、一般の固定概念にはこだわらずに、
TPOにあわせて、表現の姿と演出の形は大いに変えるべきだと思います。
2.水は謙虚な特質を持つ
強く自己主張することなく、ごく自然に高いところから低いところへ向かって流れる。
だから、無理をせず、自らを保ち、長く続けることができます。
自然の中でも、人生でも、強く固くなればなるほど、周りからの反発や雑音が強くなります。
ゴムボールや風船を無理やり強く押すと、反発力が強まることと同じです。
中国茶芸の動作の中に、「自然な流れ」「連綿」という意味が秘められています。
3.水は弱くて静かに流れていると同時に、巨大なパワーを持つ
水は、始めは小さな流れでもひとつひとつ重なって力が貯まっていくと、やがて最後には大きな力を持つ川や海になります。一見弱いようにみえる水は、強く硬い岩を長い時間をかけて細かく砕き、やがてその姿を小石や砂に変えてしまいます。
静かな水でも、たくさん集まることで、時に滝のように強大なパワーを発揮するのです。
理想的な人生でも完璧に見える中国茶芸でも、短期間で成せる技ではなく、
マラソンのように長い時間をかけなければなりません。
コツコツとに努力を重ねることができれば、必ず結果はついてくると思います。
もちろんこのことは中国茶だけに限ったことではなく、どの道においてもプロになりたいであれば、一定の時間をかけるのことへの覚悟が必要となってくるのです。
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美味しく中国茶を淹れるには、「茶」「器」「水」が大切です。
その中でも特に、安全で美味しい水がなければ、最後に美味しい「茶湯」もないわけです。
水がなければ、茶の水色・香り・味もないわけです。
水によってお茶の美味しさが表現されます。茶湯の美味しさには水が必要不可欠なのです。
理想な茶芸の動きも、水のように時に強く、時に優しく、強弱をつけます。
ワンパターンではなく、水のように周りの環境やTPOにあわせて演出と動作を変えます。
茶芸動作は、綺麗な動き、流れが良く、見た目の優雅さから、観客に感動を与えることができるのです。
さらに、水が容器に合わせて姿を変えるように、流派や固定概念に束縛されることなく、演出のテーマや個人の個性に合わせて、さまざまにアレンジすることができれば、自分オリジナルの茶席と創作茶芸が出来上がります。
観客に感動を与える茶芸とは、演出者の流派と肩書きではなく、オリジナル性の高さや演出の見事さなのです。
たくさんの細いせせらぎから大きな滝になれるように、同質・異質なものをうまく統合して、
さまざまな観点から融合・創造して、観客に大きなエネルギーとインパクトを与えるのです。
中国茶芸の世界には、勉強の終わりがありません。
一緒に美味しさを楽しみながら、頑張りましょう。
林 聖泰