楽器によって、表現される音色や音量など、趣が異なります。
品質鑑定や闘茶も同じです。
同じ高山烏龍茶にしても、生茶と熟茶、軽焙煎/中焙煎/重焙煎、季節や産地の違いなどによって、茶葉の香りや味が全然ちがいます。
生茶は、若い演奏家のように第一印象に力強さや青みを感じ、一生懸命な生命力を直接体感することが出来ます。熟茶は、ベテランの演奏家のように余裕や遊び心が感じられ、力勝負ではなく絶妙な間や余韻などに味わい深いものがあります。
焙煎度による違いは、楽器の音色に例えることができます。
軽焙煎の高山茶はヴァイオリン、中焙煎は少し強度と深みのある音色を持つヴィオラ、重焙煎はチェロのような落ち着いた音色を持ち、余韻が後からついて来る。オーケストラの中では、それぞれ役割は異なりますが、それぞれ個性があり、魅力的なことには変わりありませんが、どれを選ぶかはお好み次第ということになります。
茶葉が生産される季節の違いは、楽器の特色から例えてみます。
春茶は、弦楽器が、繊細さや多彩な音色の変化を持つように、味や香りが豊かです。一般的には、夏と秋のお茶は、例えていうなら金管楽器のように大らかで激しくストレートな表現です。冬茶は、リードオルガンやクラリネット、オーボエのようにやさしく透明感溢れる音色を持ち、しみじみとしたうまみが口の中を満たしてくれます。
産地の高度については、楽器の音域の高低に例えてみます。
高海抜の産地ほど、音色が高い楽器のように、茶葉の香りと味の変化が繊細多様で、甘みがあります。低海抜の産地で生産された茶葉は、音色が低い楽器のように茶葉の香りと味の変化は、重みとパンチがあり、耳に強く響きます。
だから、同じ高山烏龍茶にしても交響楽団の楽器のように、さまざまな音色、音程、音量などによって、役割も異なるし、好みも分かれます。
店主 林 聖泰