昨日、残業している最中に、海外から一本の電話が入りました。
電話の相手は、実家が四川省の農民で、浙江省の貿易会社に勤める方からでした。
現在の中国経済では、都市部と農村の経済落差があまりに激しく、農村の茶葉生産者が語学や知識不足のために、自力で茶葉の販路拡大がなかなかできず、直接、消費者に茶葉を届けることが出来ません。
そうすると、生産されたお茶は、中間に入る「茶葉輸出入貿易会社」に非常に安い価格で提供するしかなくなります。
もちろん電話の相手も、日本の検疫事情、風習、消費者の嗜好などについて、全然知識はありませんでした。
それでも、自分の家族のためにやむをえず、突然海外に電話をかけるのは、結構勇気がいることだと思います。
相手の話を聞くと、つまり、情報の不均衡により生じた価格落差があまりに大きいために、現在の生産から販売までの中国茶の流通について問題が生じているため、生産者自身で新しい流通経路を確立したいということでした。
常識で考えてみれば、生産量が年々増えれば、農家の収入はだいぶん増えるはずだと思います。
しかし、農家から話を聞くと、消費者末端価格は高くなっているにもかかわらず、納品価格は逆に下がっており、生産量を増やさないと生活の維持が難しくなっているということでした。
華泰茶荘が日本店をオープンした11年前と比べると、たしかに良質の中国茶の仕入れ価格は数倍以上に上がっています。
結果一番儲かるのは、生産者側ではなく、何も生産をしていない中間の輸出入貿易会社なのです。
輸出入貿易会社は、輸出先国の要求に合わせて、生産者に対して無謀な生産拡大を要求しました。
農家には、茶は農産品なのに大量生産の工業用品と同じように安く均一にということを要求されたのです。
そして一斉に増産した結果、納入価格を叩かれ、肥料、農薬などの問題も表出してきました。
さらに、茶ドリンク向けのものは市場の流行に左右され、安定的な生産量は予測できない状態です。
突然に爆発的にヒットした茶ドリンクは、納入側は、原材料となるお茶が収穫できるまで販売ロスによる品切れを避けるために大量の在庫を抱えるか、いろいろなロットとのブレンドや香料など他のものを添加するかの選択しかないのです。
なぜなら、生産側に、突然200%増産してください、と言っても、無理な話です。
お茶は、大量生産がきく工業製品ではなく、自然の恵みに頼らなければ収穫できない農産物だからです。
一本の茶木は、挿し木してから少なくとも3年以上かかります。
どちらにしても、社会にとって、消費者にとって、このような現象は決して良いものではありません。
また、売れなくなると、何万ケースのごみ処分や、在庫の投げ売りなどをしなければなりません。
このような消費スタイルは、「エコ」と言えるのでしょうか。
この10年間、日本の消費者や中国の茶葉農家にとって、本当に幸せになったと言えるでしょうか。
一回しか使わない安い茶葉を大量消費するより、少し良質な茶葉をポットで本物の香りと味を楽しみましょう。
「本物の味わい」は、コンビニに売っているものではなく、自分で心を込めてお茶を淹れてこそ
味わえるものだと思います。
≪From Tea Garden To Tea Pot.≫ ~茶畑から急須へ~
100%無添加で本物の茶葉を味わうのは、自分の健康のため、環境保全のため、生産者の努力に報いるため。