茶藝の美学=「虚と実」④ 紅花緑葉

 「実」の部分ばかりに目を奪われすぎてしまうと、意外と正しい方向性を見失ってしまう危険性もあります。「実」と「虚」の両者のバランスをとることが大事です。
そういえば、良い映画作品でも、強い個性をもった主役と、それをうまくサポートする脇役とのバランスがうまく配置されていることが重要だと聞きます。

 また、中国語の諺「紅花緑葉」は、紅い花の部分を表現するために、対照においた緑葉の部分が欠かせないのだ、と解釈できるのです。
 茶藝も、人生も、社会の構造も、つまりは同じなのです。

 あらゆる分野においてひとかどの成功を収めた人物は、この両方を大切にする人です。
 「先を見通す目」「新しい発見」は、「実」にばかり目を向けないで、その背後にある「虚」の部分まで目をやれる人、あるいは「実と虚のバランス」をうまく取ることから生まれるものなのではないか、と思います。

 自分の視点を変えることで、新たな世界が発見できるかもしれません。
 目先の実より、さらに先にある目標に向かって根気良く頑張れば、いつか世界が自分のものになることでしょう。
 これから先、さらに奥深い中国茶の世界にむかって、共に旅をしましょう。
                              林 聖泰

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