1:50と1:100、科学で選ぶ美味しい淹れ方
日本の夏は、じっとりと暑い。
そんな日、私は熱い湯ではなく、冷たい水で台湾茶を淹れます。
理由はひとつ。冷たい水のほうが、甘いからです。
意外に思われるかもしれません。
でも、これには科学の裏づけがあります。
■ まず、種明かしから
お茶の渋みと苦みは、カテキン(EGCGなど)とカフェインが担います。
この二つは、水温が高いほど多く溶け出します。
一方、甘み・うま味のもとであるアミノ酸(テアニン)は、冷たい水でもよく溶け出す。
つまり冷水でゆっくり淹れると、渋みが抑えられ、甘みが前に出るのです。
夏に台湾茶を”甘く”飲みたいなら、水出しが理にかなっています。
高山烏龍、文山包種、東方美人、蜜香紅茶のように、香りと甘みを見せたいお茶ほど、この効果は効きます。
■ ペットボトルには、”回甘”が入りません
コンビニの冷たいお茶は、確かに便利です。
ただ、そこにはどうしても入らないものがある。
飲んだあと、喉の奥からゆっくり戻ってくる甘み──回甘(かいかん)です。
生きた茶葉と、少しの手間があってはじめて現れます。
RTD(Ready-to-Drink=すぐ飲める茶飲料)の多くは、価格と保存性のために原料が選ばれ、酸化を防ぐビタミンC(アスコルビン酸)が加わることもあります。
「お茶の味」と思っているものが、”設計された風味”であることも少なくありません。
■ 冷泡(水出し)の基準──1:50か、1:100か
台湾には、水出しの目安として広く知られた基準があります。
台湾・農業部(旧・行政院農業委員会)が示した「冷泡茶の黄金比」で、
と水の重量比は1:50。冷蔵庫(約4℃)でゆっくり抽出します。
一方、専門店が家庭向けに勧めるのは、1g:100mlという控えめな比率です。
1:50はしっかり、1:100はすっきり。
どちらが正解ということはありません。
| 農業部の基準 | 1:50 | 冷蔵 約4℃ | 4〜10時間 |
| 家庭向け(専門店) | 1:100 | 冷蔵 約4℃ | 6〜8時間 |
抽出時間は茶葉の”形”で変わります。
条状(細長い)の文山包種や緑茶は、開くのが早く4時間ほど。
球状に丸めた高山烏龍・凍頂烏龍・鉄観音は、開くのに時間がかかり6〜10時間が目安です。
ちなみに文山包種や高山烏龍は、主に青心烏龍(せいしんうーろん)という品種から作られます。同じ品種でも、製法と淹れ方で表情がまるで変わる。そこが台湾茶の面白さです。
ひとつだけお願いを。
水出しは常温放置ではなく、必ず冷蔵で。
抽出したお茶は、その日のうちに飲み切るのが安心です。
■ 急ぐ日は、茶こしマグで
熱い湯を使うなら、茶こし付きマグが手軽です。
私がふだんお店で勧めている手順を、そのままお伝えします。
マグと茶こしを清潔にし、できれば一度熱湯を通して温めます。
茶葉を入れたら(華泰のマグなら、茶こしの底から最初の穴の高さが目安)、
一煎目は好みの濃さで30秒〜1分。抽出できたら茶こしを引き上げ、裏返した蓋の上に載せて止めます。
二煎目・三煎目は30秒ずつ延ばす。四煎目、茶葉が開き切るまで楽しめます。
分量は250-300mlのマグに茶葉3〜4g。
球状のお茶は湯を含むと大きく膨らむので、詰め込みすぎないのが失敗しないコツです。
この一杯を、一日の相棒にしてください。
冷たい水でも、熱い湯でも、良いお茶は日常の器で気軽に。
難しい作法より、まず一杯淹れてみることが、台湾茶を好きになる近道です。
水出しに向く台湾茶は、こちらから〔華泰茶荘SHOP〕。
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(林華泰茶行・華泰茶荘 五代目店主 林 聖泰の台湾茶研究より)
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