<台湾工場からEMS直送サービス、新会員特典、台湾国際評茶師講座、楽茶塾>...今後とも何卒よろしくお願いします。

10月25日 楽茶塾【烏龍茶、三つの進化 〜製法・産地・工夫茶器で読み解く】

目次

四種の受賞茶・秘蔵茶を、六杯で。
――古い旅の写真を開きながら、10月楽茶塾の茶を選びました

1990年代から歩いた武夷山、鳳凰山、台湾阿里山。
三十年分の写真が、今回の四種を決めてくれました。

10月25日の楽茶塾で使う四種の茶葉を選びました。
武夷奇種岩茶、鳳凰老叢単叢、文山包種茶、阿里山烏龍茶。
1990年代からの産地の記録と、宜興紫砂・潮州朱泥・白磁蓋碗で確かめる六杯のお話です。

四種のお茶を、六杯お出しします。
数が合わないのには、理由があります。

10月25日の楽茶塾に向けて、店の茶棚から茶葉を出し、古い写真と旅の記録をもう一度見直しています。
武夷奇種岩茶。 鳳凰老叢単叢。 文山包種茶。 阿里山烏龍茶。選んだ茶葉は四種類です。
けれど当日は、六杯をお出しします。

武夷奇種岩茶を、白磁蓋碗と宜興紫砂急須で。
鳳凰老叢単叢を、白磁蓋碗と潮州朱泥急須で

同じ茶葉を異なる器で淹れ、香り、滋味、口当たり、余韻がどう動くのかを確かめるためです。
昔から「茶壺(急須)が変われば、茶の味も変わる」と言われます。
けれども、言葉で聞くだけでは本当の違いはわかりません。
同じ日に、同じ水で、同じ茶葉を使い、二つの器を並べて飲んだとき、初めて見えてくるものがあります。

香りが高く感じられる一杯。
滋味が厚く感じられる一杯。
角がほどけ、丸く感じられる一杯。
飲み終えた後、喉の奥に長く残る一杯。

どちらが正解ということではありません。
茶葉には、一つだけではない顔があるのです。

古い写真の中にある、産地の時間

私が中国の茶産地を本格的に歩き始めたのは、1990年代です。
武夷山、鳳凰山、安渓、そして台湾各地。茶園に入り、製茶工場を見せてもらい、茶農家や職人から話を聞きました。
当時は、誰もがスマートフォンで記録を残せる時代ではありません。
重いカメラとフィルムを持ち歩き、製茶の様子、茶器、茶席、山の風景を一枚ずつ撮りました。

久しぶりにその写真を開くと、産地が大きく変わったことに気づきます。
道路が整い、製茶機械が新しくなり、茶葉の外観も焙煎の好みも変わりました。
強い焙火が価値を決めた時代から、品種の香り、花や果実の香り、土地の個性を細かく表現する時代へ。そしていま、また焙火が見直されつつあります。好みは、往復するのです。

だから私は「進化」という言葉を、良くなることという意味では使いません。
変わり続けること、という意味で使っています。

一方で、変わらないものもありました。
茶葉を手に取り、香りを確かめ、湯を注ぎ、何煎も飲みながら茶の本質を見極めようとする職人の姿です。あれは三十年前とまったく同じでした。
産地を歩いて学んだのは、茶は茶葉だけで完成するものではない、ということです。

茶樹が育った土地。
職人の製茶。
水と火。
茶器。
そして、淹れる人の手。

そのすべてが重なって、目の前の一杯になります。

同じ青心烏龍が、二つの形になる

今回選んだ文山包種茶と阿里山烏龍茶は、どちらも青心烏龍品種です。
けれども、文山包種茶は細長い条形、阿里山烏龍茶は固く揉み込まれた球形。
同じ品種なのに、産地と製法が変わると、姿も、香りも、茶湯の厚みも変わります。

文山包種茶には、白い花を思わせる清らかな香りと、軽やかな透明感。
阿里山烏龍茶には、高山茶らしい花香と甘み、ゆっくり葉が開いていく厚み。
この二杯を続けて飲むと、「品種」と「製法」のどちらが香りをつくっているのか、考える入口が見えてきます。

二百四十年前も、同じでした

1786年の秋、清代の詩人・袁枚が武夷山を訪れています。
袁枚はもともと武夷茶を好んでいませんでした。「濃くて苦く、薬を飲むようだ」と。
その印象を変えたのが、山中で出された小さな器の一杯でした。

杯は胡桃ほど。壺は香櫞ほど。まず香りを嗅ぎ、それから味を試す。
そして袁枚は、飲み終えた後のことを書き残しました。

杯中已竭香未消。

杯の中は尽きても、香りは消えていない。

2026年は、それからちょうど240年です。
私たちが烏龍茶を見るところは、あまり変わっていません。

香りだけでなく滋味を見る。
口に含んだ瞬間だけでなく、飲んだ後を見る。
一煎だけでなく、葉が開いていく時間を見る。

(袁枚のこの話は、「茶詩詞話」のほうで詳しく書きました。よろしければそちらも。)

評茶師の舌と、茶藝師の手

評茶師は、条件を揃えて違いを見つけます。
茶藝師は、茶葉の個性を見て、器と淹れ方を選び、その魅力を引き出します。

今回の楽茶塾では、この二つの視点を一つの茶席に置きたいと思っています。

条件をできる限り揃えて、器が変わることで生まれる違いを確かめる。
同時に、その茶を最もおいしく楽しむには、どの器と淹れ方がよいのかも考える。

科学的な比較だけでもなく、美しい茶藝だけでもない。
知識と感覚、評価と表現。その両方を行き来する二時間です。

私は、茶の講座を難しい言葉だけの時間にはしたくありません。

まず飲んで、「何か違う」と感じる。
その違いを風味マップに書いてみる。
みなさんが選んだ「香りの一杯」「余韻の一杯」を比べてから、私が産地、製法、器の背景をお話しする。

飲む、考える、話す、もう一度飲む。
その順番なら、知識は暗記ではなく、ご自身の舌の記憶になります。

四種のお茶が六杯になる理由を、ぜひご自身で確かめてください。
最後の一杯を飲み終えたら、空の茶杯をそっと鼻に近づけてみましょう。
そこに残っている香りこそ、烏龍茶が最後に語る言葉かもしれません。

杯中已竭、香未消。 茶杯が空になってから、本当の烏龍茶が始まります。

(林華泰茶行・華泰茶荘 五代目店主 林 聖泰)

10月25日楽茶塾 開催案内

【烏龍茶、三つの進化 〜製法・産地・工夫茶器で読み解く】
――四種の受賞茶・秘蔵茶を、六杯で。

日時:2026年10月25日(日)10:30〜12:30(10:00入場)
会場:渋谷・華泰茶藝館 3F
講師:林 聖泰(林華泰茶行・華泰茶荘五代目店主/一級評茶師・茶藝師)
参加費:5,500円(税込)
定員:24名
▶︎ https://www.chinatea.co.jp/shop/products/detail/3433
——————————————————
<特典>
◎ プロ用 官能審査表
◎ 特製副読本(8頁/¥1,500相当)
  アンケート回答者に無料プレゼント!
——————————————————-

(華泰茶荘では台湾茶・中国茶を、産地直送の茶葉とともに学べる講座を開いています。詳しくは華泰茶荘SHOPにて。)

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次