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台湾中元帰省旅行①なぜ日本はお盆に墓参りし、台湾は清明節に掃墓するのか

目次

――父を亡くして初めて迎える台湾の中元節

これから、台湾への帰省旅行が始まります。
今年は、いつもの台湾行きとは少し違います。
父が亡くなってから初めて、農曆七月、中元節の季節に台北へ帰るからです。

これまで何度も台湾と日本を往復してきましたが、この時期に帰省することはほとんどありませんでした。
日本で仕事をしていると、お盆前後は忙しく、航空券も高い。
「台湾へ帰るなら、別の時期でいい」
そんなふうに考えていました。

ところが父が亡くなってから、「中元節」という言葉が、以前とは少し違って聞こえるようになりました。

日本のお盆と台湾の中元節は、同じなのか?

日本に長く暮らしていると、一つ不思議に感じることがあります。

日本では、お盆になると家族でお墓参りをします。
一方、台湾では祖先のお墓を訪ねて掃除をする「掃墓」は、
春の清明節に行うのが一般的です。

では、台湾の中元節は日本のお盆と同じなのでしょうか。
答えは、
似ているけれど、同じではありません。

どちらも祖先や亡くなった人々を思う文化ですが、
それぞれの土地で異なる形に発展してきました。

日本のお盆――「帰ってくる祖先」を迎える

日本のお盆で印象的なのは、「ご先祖が帰ってくる」という考え方です。
迎え火を焚き、祖先を迎え、供物を用意し、墓参りをする。
そしてお盆の終わりには送り火で見送る。

単に「墓へ行く日」というより、
亡くなった家族を、もう一度家へ迎える時間なのだと思います。
だからこそ、帰省と墓参りが一つの行事として結びついてきました。

台湾の中元節――家族を越えて「普度」する

台湾の農曆七月では、少し違う世界が広がります。
町を歩くと、家や店、会社、寺廟の前に供物が並び、香が焚かれます。

中心にあるのが、普度(普渡)です。

自分たちの祖先だけではありません。
祭ってくれる家族のいない亡き人々、いわゆる「好兄弟」にまで食べ物や飲み物を供える。

台湾の中元節には、
「自分の家族だけではなく、縁のない亡き人にも一膳を」
という広がりがあります。

日本のお盆を「お帰りなさい」と表現するなら、
台湾の中元には、「あなたにも、どうぞ」という気持ちがあるように感じます。

では、なぜ台湾では清明節に墓参りをするのか

台湾で祖先の墓を訪ねる大切な節目は、春の清明節です。
墓地へ行き、草を取り、墓を整え、供物を並べ、祖先を祭る。

つまり台湾では、おおまかに見ると、
清明節=祖先の墓を訪ねる日
中元節=祖先と、さらに広い亡き人々を供養する季節
という役割の違いがあります。

日本では、祖霊が夏に帰ってくるというお盆の文化が発達したため、
夏の帰省と墓参りが強く結びつきました。
同じ東アジアの祖先供養でも、暦と暮らしの中で少しずつ違った形になったのです。

「祖先」という言葉の中に、父が入った

私は子どもの頃から台湾の中元節を見てきました。

市場に積まれる供物。
家の前に置かれた供桌。
香の匂い。
普度の風景。
それはずっと、台湾の夏の風物詩でした。

しかし今年は違います。
今まで「祖先」と聞けば、祖父母や曾祖父母、さらに昔の人々を思い浮かべていました。
今、その中に父がいます。
知識として理解していた「祭祖」という言葉が、自分自身の人生の中へ入ってきました。

文化とは不思議なものです。
同じ行事でも、自分の人生が変わると、見える景色まで変わります。

人は、なぜ亡くなった人のために日を決めるのか

日本ではお盆。
台湾では清明節と中元節。
日付も、方法も違います。
けれど、その奥にある思いはそれほど違わないのかもしれません。

それは、「忘れていません」と伝えること。

亡くなった人が本当に帰ってくるかどうかは、誰にも分かりません。
でも、その人を思い出した瞬間、声や表情、一緒に過ごした時間は確かに自分の中へ戻ってきます。

もしかすると人は、亡くなった人を忘れないために、暦の中に「再び会う日」を作ったのかもしれません。

そして、これから台湾へ

この記事を書き終えたところで、これから台湾へ帰ります。

父が亡くなって初めて見る、農曆七月の台北。
中元普度。
市場。
寺廟。
家族。
そして、茶のある日常。
これまで何気なく見ていた風景が、今年はどのように見えるのでしょう。

今回の帰省では、観光案内ではなかなか見えてこない台湾の暮らしや、中元節の実際、家族と茶の記憶を少しずつ記録していきたいと思っています。

2026年・台湾中元帰省旅行。
これから始まります。どうぞお楽しみに。


(文章・写真:林華泰茶行・日本華泰茶荘 五代目店主 林 聖泰)

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