──「茶藝」と「評茶」は、何が違うのか
華泰の茶藝館には、朝の開店から夜まで、一日じゅう過ごしていく常連がいる。
本を読み、考えごとをし、友と語り、茶料理をつまみ、お茶を何煎も淹れながら。
なんでもない一日を、まるごと茶藝館で過ごす。
いい時間だな、といつも思う。
茶藝館とは、そういう「ただ居られる場所」なのだ。
そして、その時間を重ねるうちに、多くの人が、もう一歩踏み込みたくなる。
「このお茶のこと、もっと知りたい」と。
そう、茶藝館は、楽しむだけの場所ではない。学びへの入口でもある。
「茶館ノート」台湾編の最後に、その「学び」の話をしたい。
お茶を深く知るには、大きく二つの道がある。
茶藝と、評茶だ。
茶藝(ちゃげい) は、お茶を美しく淹れ、味わい、もてなす「表現」の世界である。
茶器の選び方、湯のあつかい、注ぎの所作、空間のしつらえ。
一杯を、いかに美しく、いかに心地よく差し出すか。
茶藝館で見かける、あの流れるような淹れ方こそが、茶藝だ。
評茶(ひょうちゃ) は、お茶を正しく見極める「鑑定」の世界である。
茶葉の外観、香り、水色(すいしょく=水の色)、味、そして淹れたあとの茶殻まで、決まった手順で観察し、その品質を判定する。
良し悪しを、なんとなくの感覚ではなく、確かな基準で言葉にする。
これは、まぎれもないプロの技術だ。

なぜ、両方が大事なのか。
どれほど美しく淹れても、茶葉そのものを見抜く目がなければ、
本当に良いお茶を選ぶことはできない。
逆に、見極める目があっても、淹れて差し出す技がなければ、
その良さは相手に伝わらない。
両輪がそろって、はじめてお茶は、いちばん豊かなかたちで人に届く。
私自身、評茶師であり、茶藝の講師でもあるが、
長く茶に携わるほど、この二つは切り離せないと感じている。
だから華泰茶荘では、茶藝も評茶も、基礎からきちんと学べる講座を開いている。
肩の凝らない「楽茶塾」の催しから、国家資格である茶藝師・評茶師をめざす本格的な講座、プロを養成する集中講座、インストラクター講座まで。
茶藝館で「楽しむ」ことから始めて、「学ぶ」ことへ、そして「極める」ことへ。
その道は、ちゃんと地続きにつながっている。
ここで、台湾の茶藝館をめぐる旅も、ひと区切りだ。
その正体を問い、百年の歩みをたどり、九份と猫空と台中を歩き、茶水費を解き、ゆっくりした楽しみ方を知った。
そうして見えてきたのは、たったひとつのことだった——
茶藝館は、「お茶を飲ませる店」では、決してない。
それは、茶葉を買い、一杯を味わい、半日を過ごし、知識を学び、人とつながる。
茶を中心に、これだけのものを集めた、ひとつの文化の場なのだ。
だから、茶藝館は、飲食店の物差しでは測れない。
回転率でも、客単価でもない。
次にあなたが茶藝館の扉を開けるとき、目の前にあるのは、ただの一杯のお茶ではない。台湾が百年かけて育てた、文化そのものである。
次回からは、海を渡る。
同じ「茶を囲む場所」が、中国ではどんな顔をしているのか。
上海、北京、杭州、四川——中国茶館の世界へ、一緒に茶旅行の案内をしたい。
(文章・写真:林華泰茶行・日本華泰茶荘 五代目店主 林 聖泰)
――学びの入口として、いま募集している講座を三つ。
▶ 第4回 『台湾国際評茶師 初級講座』……

評茶=「正しく見極める」道の第一歩。
外観・香り・水色・味・茶殻を、手順に沿って判定する基礎から。
香り、滋味、品種、製法、産地を体系的に学び、
評茶の視点から一杯の茶を読み解くための政府認定資格取得の専門講座です。
<10月9月10日-10月18日WEB事前講習+10/17-18渋谷対面授業>
https://www.chinatea.co.jp/shop/products/detail/3430
▶ 楽茶塾(10月25日)……
肩の凝らない、味わうことから楽しく勉強できるお茶会。

【烏龍茶、三つの進化 〜製法・産地・工夫茶器で読み解く】
ーー 四種の受賞茶・秘蔵茶を、六杯で。
10月25日(日)10:30-12:30 @渋谷・華泰茶藝館
https://www.chinatea.co.jp/shop/products/detail/3433
▶ WEB中国茶旅・茶文化講座……
産地と茶館をオンラインでめぐる。遠方の方もご一緒に。

WEBライブ講座(90分間)+公式副読本(8P)+見逃配信付(3週間)
⚫️ 第1回
【シルクロードの茶・歴史・異文化の物語〜西安から敦煌の茶旅行紀行】
⚫️ 第2回
【茶馬古道・天空雪域チベットの紀行 〜茶と文化の物語
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