乾物、漢方、布、縁結び、そして最後は百年茶行へ
台湾旅行五日目。
今日は、迪化街を歩いてきました。

台北には、有名な観光地がたくさんあります。
でも、「台湾らしい空気を丸ごと感じたい」と聞かれたら、私は迷わずこの場所をおすすめします。
迪化街は、ただの古い街並みではありません。
乾物がある。
漢方がある。
布がある。
廟がある。
古い商家がある。
新しい文創ショップもある。
そして、台湾茶の歴史につながる商いの記憶もある。
つまりここは、台湾の暮らし、祈り、商売、食文化、お茶の背景が一度に見えてくる通りなのです。
迪化街は、台北の「乾物と漢方の宝庫」
迪化街を歩いて最初に感じるのは、香りです。
ドライマンゴーの甘い香り。
乾燥なつめやクコの実の薬膳らしい香り。
干し椎茸、干し海老、豆類、乾燥果物、漢方薬材が混ざり合った、少し懐かしい香り。
日本の方には少し聞き慣れないかもしれませんが、台湾ではこうした乾物や薬膳素材をまとめて「南北貨」と呼ぶことがあります。
南から来たもの、北から来たもの。
山のもの、海のもの。
甘いもの、身体を整えるもの、料理に深みを出すもの。
迪化街は、台湾の食卓を支えてきた食文化の宝庫です。
観光で台湾へ来ると、つい「何を食べるか」に目が行きます。
でも迪化街を歩くと、その一歩手前にある、台湾料理を支えてきた素材の世界が見えてきます。これは、レストランだけでは分からない台湾です。
大稲埕は、茶と布と商人の町だった
迪化街を含む大稲埕一帯は、台北の古い商業エリアです。
清代後期から商業の中心として発展し、茶、布、薬材、雑貨などが行き交う場所でした。
特に「大稲埕碼頭」(埠頭)は、かつて茶や綿布、絹織物などの交易で栄え、多くの商人や洋行が集まる重要な拠点でした。
お茶というと、多くの方は茶畑を思い浮かべると思います。
もちろん、茶畑は大切です。
でも、茶は畑だけで文化になるわけではありません。
茶を作る人がいて、
茶を運ぶ人がいて、
茶を選ぶ人がいて、
茶を売る人がいて、
茶を飲む人がいる。
迪化街や大稲埕を歩くと、台湾茶がただの農産物ではなく、
都市の商いとともに育ってきたことがよく分かります。
霞海城隍廟で、台湾の「願い」を見る
迪化街で外せない場所の一つが、大稲埕霞海城隍廟です。
ここは家内安全や平安祈願でも知られていますが、特に有名なのが月下老人の縁結びです。
恋愛成就、良縁祈願、夫婦円満を願う若い人たちが、今も多く訪れています。
台湾の廟は、単なる観光スポットではありません。
そこには、人々の本当の願いがあります。
家族が元気でありますように。
よいご縁がありますように。
仕事が順調でありますように。
夫婦や家族が円満でありますように。
そうした祈りが、街の真ん中で今も自然に息づいている。
迪化街を歩く面白さは、商売の活気だけでなく、
こうした台湾人の心のあり方にも触れられることです。
永楽市場2階は、茶席を学ぶ人の宝箱
そして今回、私が改めて「ここは茶藝を学ぶ方にぜひ見てほしい」と思ったのが、永楽市場です。
1階は市場らしい活気のある空間ですが、本当に面白いのは2階と3階。
ここには、布地、カーテン、飾り布、テーブルクロス向きの布などが並ぶ布の専門店が集まっています。台北市政府の市場情報でも、永楽市場の2〜3階は布地・カーテン・飾り布の小売・卸売中心として紹介されています。
茶藝を学ぶ方、中国茶講師を目指す方にとって、ここはまさに宝箱です。
茶席には、茶葉と茶器だけでは足りません。
布の色。
布の質感。
柄の強さ。
季節感。
茶器との相性。
空間全体の雰囲気。
一枚の布で、お茶の印象は驚くほど変わります。
春の文山包種茶には、軽やかな布。
焙煎のある烏龍茶には、少し落ち着いた色。
東方美人には、華やかさと品格のある柄。
評茶会には、茶湯の色が見やすいシンプルな布。
そんなことを考えながら永楽市場を歩くと、布を見るだけで茶席のイメージが次々に浮かんできます。
これは、茶席設計のよい実地勉強です。
迪化街は、古いだけではない
迪化街の面白さは、古い街並みが残っていることだけではありません。
昔ながらの乾物店の隣に、現代的な文創ショップがある。
漢方薬材店の近くに、おしゃれなカフェがある。
布問屋のそばに、若い人が集まる雑貨店がある。
古いものが、ただ保存されているのではない。
今の暮らしの中で、ちゃんと使われ続けている。
ここが迪化街の魅力です。
台湾は、古いものを完全に博物館化するのではなく、日常の中で生かしていく力があります。これは茶にも通じます。
伝統茶も、ただ古いだけでは残りません。
今の人が飲み、使い、語り、楽しむからこそ、生きた文化になります。
最後は、百年老舗問屋・林華泰茶行へ
迪化街を歩いた後、ぜひ足を延ばしていただきたい場所があります。
それが、林華泰茶行です。
林華泰茶行は1883年創業、台北で最も古い茶行の一つとして知られる百年老舗です。
公式サイトでも、茶葉の卸売・小売を行い、現在も大きな茶桶が並ぶ昔ながらの茶行として紹介されています。
迪化街で乾物を見る。
漢方の香りを感じる。
霞海城隍廟で人々の祈りを見る。
永楽市場で茶席に使える布を探す。
そして最後に林華泰茶行へ行く。
この流れは、実はとても自然です。
なぜなら、台湾茶は茶畑だけでなく、こうした商いの町、乾物の町、布の町、祈りの町とともに育ってきたからです。
林華泰茶行では、観光用に飾られた台湾茶ではなく、日々の商いとしての台湾茶、問屋としての台湾茶、暮らしの中で飲まれてきた台湾茶の姿に出会えます。
大きな茶桶を眺め、茶葉の香りを感じる。
派手な演出ではなく、台湾茶そのものと向き合う時間。
それが、百年老舗問屋を訪れる面白さです。
五代目店主の一言
次に台北へ来られる方は、ぜひ半日だけでも迪化街を歩いてみてください。
乾物を見て、漢方の香りを感じ、霞海城隍廟で台湾の祈りに触れ、
永楽市場2階で茶席に使う布を探してみる。
そして最後は、百年老舗問屋・林華泰茶行へ。

台湾茶は、茶畑だけで生まれるものではありません。
町を流れ、人の手を渡り、暮らしの中で飲まれて、初めて文化になります。
迪化街から林華泰茶行へ歩く一日は、
台湾茶が「商品」から「文化」に見えてくる一日になるはずです。
林華泰茶行|台北市大同区重慶北路二段193号
▶︎ https://maps.app.goo.gl/81AJtJGa1QbbU5nBA(Googleマップ)
(華泰茶荘・林華泰茶行 五代目店主 林 聖泰 より)
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https://www.chinatea.co.jp/category/top/story/chatea-chakan-note-story/
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